車を囲んで、走りや自身のこだわりについて語る、たのしいひととき。
そのひとときのきっかけは、いつもデザインだった。
これまで空力を始めとした走行性能向上について語ってきた。
次は“機能美”、特にデザインについて。
「眺めたいよりも、乗ってみたい!」このこだわりについてご紹介したい。
エアロパーツを造り込んでいくときに、デザインに想いを馳せる。
どのような景色の中に佇み、どんな道を走り、その姿を見つめられ。
どのような服で乗り、どういった場所に向かい、どんな時を過ごすのか。
例えば、NX。
ご夫婦・ご家族で真っ直ぐ伸びる海辺をドライブする、空気が綺麗な山道を爽快に駆け抜ける、などが真っ先に浮かんだ。
時折、打ち寄せる海風やトンネル風を感じさせない安定に満ちた上質な走り。
感性を揺さぶるデザインに辿り着くまで、時間を忘れて語る。
こういうモノであってほしい、自分だったらこういうモノが欲しい。
この領域を超えたとき、「眺めていたい」だけのデザインが「乗ってみたい!」デザインになる。
たっぷりと時間をかけ、ヒントが垣間見えた後、ここからは私たちの掲げる“機能美”に辿り着くまで無駄な要素をそぎ落としていく。
目指すイメージはアスリート。
その無駄のない躰はスポーティな走りを予感させ、それでいてシンプル。誰が見ても洗練されている。
私たちが、ずっとこだわり続ける機能美。
それは、確かな効能を持った“機能”と感性を揺さぶる“美”。
二つの要素が双生するほんの僅かな領域にある。
純正のボディラインをつぶさに観察し、分析する。
初見では分からない気付きがある。線の繋がりや、意味に気付かされる。
眺めれば眺めるほど、その美しさに溜息が出る。
ボディラインを無視してエアロパーツをデザインするのは比較的簡単だと思う。一方、引き立てるラインを描くのは思い立ってすぐに出来るものではない。
すでに完成された純正のデザインをどう再構築するか。
ストリームライン(抵抗の少ない流線)をイメージしながら全体の構図を決めていく。
デザイナーは筆を走らせるように、鉛筆を持ちだす。
書道を嗜むときの留め・はね・はらいを取り入れて。
「永字八法」という言葉。
「永」の字には書道の筆使いの全てが含まれている。
漢字にある右はらいのように、力がじっくりと入ってからはらう線。
これは、フロントスポイラーがうけた風をアンダーフロアに流し込んでいく様に近い。
次第に、変節点を増やしていく。
ただ節を「増やす」と言っても、純正の“韻”を踏みつつ、繊細に。
それは、ディティールで遊び、見えない風と戯れるように。
日本のロボットアニメも、歴史を追うごとにそのデザインに使われるラインは変節点を増している。
プリミティブな平面と球面で構成されていたロボットたちは、次第に複雑な曲面と稜線で構成される有機的な造形に。
十数年前までは、クレイ(粘土)を使ってモデリングし、段ボールを使って評価用の部品を作ってきた。
今ではCADや3Dプリンターを中心に、時にはクレイも駆使しながら、細かい部分を造りこむ。
幾度も、様々な角度から検証する。
「ここは空力のために外せない」「そこは韻を踏むべき」
“良い”加減を探すのは、針に糸を通すよう。
想いを込めたデザインは、この後の機能評価や官能評価へと送り出されている。
すべては、機能に裏付けされた美のために。
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